2000.5.31

雨が降ってゐる、しとしとと、我々に沈み込んでくる、また、昇華してゆく。決して激しくないそれは、いつものやすらぎを冷やゝかなその母胎に収めて呉れる。私は空を見上げては雨の事を思ふ。それは雨に過ぎない。そして雨である。雨であるがゆえに、それは我々とは別のものになってゐた。
人は人を見放すが、雨は人を見放さず避けることはない。降ってゐる間に限って、降ってゐる間だけは、雨はいつまでもそこにいる。

そして僕は雨が好きだ。


以下2016.10.28記す

九〇年代から既に、何度も雨を好む描寫を繰り返してゐたやうで、これもそのひとつである。