鶴来巷行 #1

週末、ふと思い立ち鶴来へと電車で出かけてきた。

鶴来(つるぎ)は金沢市内から北陸鉄道にのって約30分ほど南下したところにある、酒造業で有名な町だ。「萬歳樂」や「菊姫」など、県外の方でも耳にしたことはあると思う。

ここ数日冬から春に急速に空気が変わりつつある。この日も風の匂いは冬から春のそれへと変わりつつあった。土をおこせば途端に春がやってくるような気がした。

昼過ぎに電車に乗り(駅に向かう途中、電車が行くのを見送ってしまったため、私は30分ほど駅員もいない構内で学生たちに混じって電車を待つ羽目になった)、14時過ぎに鶴来に到着した。鶴来駅舎内にはストーブが置かれていて、私は天井を見やりながら手をほぐしていた。駅員が私を見ているのに気づいたので、軽く会釈をして外で出る。

銀色のさえずり

駅前の川べり通路は殆ど通行が出来ないほどに雪に埋もれてしまっていたが、そこからひょっこりと顔を出していたのは銀色の鳥だ。私はこれに見覚えがあった。確か能登に行った時にも、同じようなオブジェが置かれていたのだ。同じ作者なのか、もしくは公共設備の一種にこれがデフォルトであるのだろうか。陽光が乱反射してまぶしい中、私はシャッターを切って背面のディスプレイで写りを確認しようとしたが、明る過ぎて画面が全く判別できなかった。レンズもMFなので帰ってからピントがあっていない、なんてことが多々ありそうだと思った。

獅子吼

山の方を見やると、雪化粧の獅子吼高原が見えた。数年前にロープウェイに乗って山頂に行ったことがある。確かスカイダイビングも出来るはずだ。

萬歳楽

快晴

地理的に実際にどうかはわからないが、中央を走っている道を歩いて行くと、ちょうど町のど真ん中あたり(と勝手に想像している)に、萬歳樂の店舗があって、向かいにはスーパーがあった。写真にちらりと「菊姫」も見えている。地図も土地勘もないので、私は適当にぶらぶらと奥へ歩いて行くことにした。