2004.11.10

犬の散歩をしながら、足早に訪れる夕闇と去りゆく陽を思ふ時は、 過去に出會った人々と今再会したら、彼らは私のことをどう思ふだらう、 と考える。私のことを變はってしまったと言ふだらうか。 五年、或いは十年。その時間は私をきっと變へてしまってゐるはずだ。 一般論を言へば、根の部分は變はっては居ない。だが、彼らが私の根っこの部分を知ってゐるとも限らないから、きっと彼らの言ふのは 心からのことなのだ。私の身体は少なくとも、五年前よりはアルコールに 對して強くはなってゐる。だが、その分ときどき、ひどくそれを欲する。 酔ふことで現状の苦しみから逃げることもある。それは以前はできなかったことだ。決して強くはなってゐない。私自身は。それでも昔より 大人になったと言へるのだらうか?私の好きなものは變はっては居ない。 電線に切り取られてゐない空、冬に近づくにつれ香りだす静かな土の匂い。 心を乱さない静寂と、心を揺さぶる風。どれも、私は決して忘れることは できない。