緑にほひて
つばむ昏しや
しのづやに
鶯待てども
みえぬ春こゑ
カテゴリー: 詩作
亡くなられた守の方へと
寺の境内の夏は 日曜學校に蟬の聲
門の日陰に卓球台を置いてくださり
近所の小學生が集まりました
秋は金柑、植わつた樹から
もいだ実を幾度となく戴いたのを
何より覺えてをります
冬は水場に張る氷を探してまはり、
春の新緑を見ぬまに、
雪どけにしのびつ、
あひ哀しや あひ哀しや
冷えたる道
鬱蒼とした迷ひ子よ
滅多なことでは開かない、
この暗い、石づくりの冷えたる道
むきだしのガラスに
素足をつらぬかれようとも
歩きつづけるか
線香花火
みずたまりをはね、
うつるラムプは
雨に散らされ、
線香花火のやうに
さむざむしき音くずし、
虚ろな、
光源を私は見失ひ。
みずたまりの暗闇をともす。