「近くに燃えやすい物があると危ないから。」
夏の夜、線香花火の花咲く様子を見ながら大人はそうつぶやいていた。
赤黄緑紫-とりどりのか細い紙縒りをつまんでぶらさげ
そっと蝋燭の火に触れさせると
息を吹き込んだ火薬が火の粉を吐き、そしてじりじりと熱い塊に変化する。
震えないように、手首をしっかり固定しようと意識すれども身体が揺れ
さらに身を固くしようと力を込める
……なのに、火をつけてほんの間際なのに
重くぶら下がっていた玉は地面に吸い込まれていってしまった。
ふと、玉の行方が気になって、暗がりの中、落ちたあたりの地面をそっと指で探ってみた。
地面の一点から、脳天を震わすほどの衝撃を感じて思わず見をすくめた。

指先に、魚卵のように瑞々しい水泡が出来ていた。