「もう待ってらんねえから勝手に食っちまおう。さ、兄さんも…
何、遠慮するこたないよ。あたしはここのオヤジには顔がきくからね…」
そういって男は狐目男にも勧め、自分もいそいそとちくわを箸でちぎってパクリ
「…あちあち…ふ〜…そういえば…兄さんはこの辺に出るって噂の幽霊の話を知ってるかい?
なんでも男だと危ないって話だよ、マラを食いちぎられちまうって…う〜ヤダヤダ…おっかないねえ」
男がちら、と見上げると
狐目男は端正な口元をにぃ、と歪め

「その 幽霊ってのは もしかしてこんな奴じゃありませんでしたか?」

言い終わらぬうちに狐目男の顔はどろっと溶け…みるみる恐ろしい髑髏の姿になったではありませんか…

「あ〜…こんな奴だったかって聞かれてもねえ…あたしは実物を見たわけじゃないんでね。
…ところで兄さんそんなに痩せこけてましたっけ?ん、こりゃ上等の毛皮の襟巻きだねえ…」
「あ、あの…」
「そんな骨ばっかなナリじゃあいけねえ…カルシウムは足りてそうだがね…
そうだ、今から鰻でも食いにいきましょうか?大丈夫!あたしが奢ってあげますから。
え?ここの勘定??なに、さっきも言ったがあたしゃこの店にはツケが利きますからね…」

男は髑髏の腕を引き、店を出て街道を急ぎ歩いて行きましたとさ