火はさほど勢いも増さず、木をあぶり焦がすように燃えている
お互いに一言も交わさずに暫くぼんやりと見つめていた。
自分の頭から、髪の毛を一本引き抜いて、燃える火の中に投じてみた。
甘く饐えた匂いを吸い込むと胸焼けがしてうっとりと気持ちがよくて
僕はそっと友の顔を伺い見た。
ビー玉みたいに大きな目玉に柑子色の光だけが揺れ、微動だにせずに僕の隣にしゃがみこんでいる。
砂場の表面に顔を出しているビニールの切れ端を見つけ、指でつまんで引きずり出し、火の中に落としてみた。
空気の抵抗を受けて揺れながらぱさりと火に落ちたビニールから煤けた煙が上がり
目と鼻と喉を強烈に刺激されて僕らは涙と鼻水を垂れ流してむせ返った。
ぐしゃぐしゃの情けない顔を服の端でこすりながら、それでも火から目が離せないまま
友達は砂だらけでざらついた手で僕の手をしっかりと握りしめてきた。
片手の自由を奪われたまま、

僕は落ちていたプリンのカップに満たして用意してあった水を火の上から注ぎ込んだ。

ジュ……と音を立てて火は儚く死んでいった。

次の日
学校から帰ると、僕は母親に呼ばれ、こっぴどく説教された。
友達が、喋ってしまったらしい。
良心の呵責のあまり、黙っていることが出来なかったのだ。

二人だけの秘密だと思っていたのに。