手紙

内情

これは静かな写真ではない。どうどうと用水が、一本の用水がたびたびその流れを急にしたり、緩くしたりして、流れの中でぶつかり合って音を立てている。木倉町を歩いて抜けた。台風が来ているらしく、暑さが続いて気が晴れぬ。毎日毎日、三五度を超える暑さで、さらには外はあちこちからの反射熱でフライパンの上をさまようようである。私が落ち着いて静かな写真を撮るのは、この暑さではむずかしいという結論に達した。かといつて、こうして水を観ていたからと言って、涼しくも感ぜられない。

重なる_葉

武家屋敷の塀に触らぬよう、しかし日陰を探すようにして歩いた。生垣は先に云った壁や地面と違って涼しい空気を返してくれる。もともとこの地区は壁が多いが、それにしたつて、最近は生垣も減ってきたやうに思ふ。

緑を見ると、椿を想う。そして葉がこうして幾重にも重なっているのをみて、手紙のやり取りで言葉を重ねてきた友人たちを想う。あるときそれは途絶えた。続けて出してよいものか。迷う。その人にも送りたい、そうでない人にも互ひに許されるならば、送り合いたく思う。

束縛

手紙の束を輪ゴムで留めていなかったろうか。あれはよくない。紙紐かなにかで結わえなおさねばならないだろう。