『はうだつ』のまちから、『はくい』への道すがら、車を停めてもうすっかり暗くなった道を眺めてみた。既に、陽の当たらぬ寒さがあたりに染み入ってゐる。
だだッ広い田んぼの真ん中をつっきるやうに整備された道路にそって…またそれと交差する山の向かふへと續く道にそって… 電燈(らむぷ)が てん てんと 續いている。
てん てん と。
だれかのおとしもの。
だれかのおとしものの宝石のやうだ。
目だったネオンもなく、ほとんど一色の灯りを見ながら、少し歩いてみる。私の視点とともに、灯りは上下する。もし雲が私の上で雨を降らせてゐなければ、星空たちと目を合はせることもできたかもしれない。
私はエンジンを掛けなほし、また家路へとつく。てん、てん、と。