2006.1.9

散歩しながら寫眞でも撮らうと思って、家の近くを歩いてみた。途中で雪が強くなり、私は屋根の下でそれが弱まるのを待った。芯からじんと冷えてくる。どこからともなく白黒の猫が近寄ってきた。人懐こいやうで、私に忙しなく擦り寄ってくる。なき聲をあげてゐるうちに、また別の猫が現れ、まもなくまた別の猫がやってくる。私は知らないうちに猫が集まる場所にゐたのだらうか。白っぽい猫(彼女はやけに人を値踏みするやうな目をしてゐるやうに思えた。)、片目の見えない猫、酷く警戒心の強い猫(よく爪を研いでゐた)。

72692337_124

72692337_130

72693044_87

2005.11.29

湯涌。薄暗い日だったが、もう散り去る前の葉たちは紅く、私は手を伸ばしては届かない中空を探ってゐる。散ってはこない。

2005.11.26

夕暮れどき

57732531_148

とろとろと、夕暮れは足早に、
けれどどこか、お互ひを惜しむやうに
海と山の向かふへと、残り香が潮風に吹き飛ばぬやう、
溶けるやうな時間をありがたう。

晩秋の色に染まる川面に私は映らないが、 
私の眼には、誰かが映ってゐる。

やがて潮風は激しくなり、私を揺らして
耳を澄ませても
彼らの聲は聞こえなくなる。

帰らう、そして時間は電燈の頃へとうつるのです。

2005.11.23

『はうだつ』のまちから、『はくい』への道すがら、車を停めてもうすっかり暗くなった道を眺めてみた。既に、陽の当たらぬ寒さがあたりに染み入ってゐる。

だだッ広い田んぼの真ん中をつっきるやうに整備された道路にそって…またそれと交差する山の向かふへと續く道にそって… 電燈(らむぷ)が てん てんと 續いている。

 てん てん と。

 だれかのおとしもの。

 だれかのおとしものの宝石のやうだ。

目だったネオンもなく、ほとんど一色の灯りを見ながら、少し歩いてみる。私の視点とともに、灯りは上下する。もし雲が私の上で雨を降らせてゐなければ、星空たちと目を合はせることもできたかもしれない。

私はエンジンを掛けなほし、また家路へとつく。てん、てん、と。

2005.10.6

今夜は殆ど雲もなく、月もひっそりとしてゐる。仕事が終わった私は、駐車場でぼうっと夜空を観ていた。人は、誰も居ない。

私は星をみるのが好きだ。

星について、詳しくはない。星座も殆ど知らない。天文のことを、勉強したこともない。けれど星をみることが好きだ。實家の周りは田んぼばかりだったし、ネオンからは離れた場所で夜空を見上げることが出來た。星空を見るときは、周りが暗ければ暗いほどよい。自分の眼が闇に慣れてゐるほど彼らの微かなまたゝきを捉へることができる。

私の視力は昔に比べると落ちてしまったが、それでも見える星空といふものは變はらない。或いは目で見てゐるといふよりも、感じ取ってゐるやうだと思う。目を凝らす必要はない。眼を夜空に晒す。星は自然と姿をあらはしていく。

私は車にもたれながら、夜空を仰いだ。能登もまた、なんと素晴らしい星空だらうか。激しくまたゝく星もある。まるで固定された光のように、動かないものもいる。ほんの微かな光だが、いくつもが集まってゐるものもある。細かな、微かな、光の粒が数へ切れないほど広がってゐた。とても広いプラネタリウムのやうだった。

ふっと目を閉じる。光を求めやうとしてゐた跡が、瞼に感じられた。今かうしてゐる間にも、星は生まれ、死んでいるといふ。人の作り出す光とはまた違ふ星の光は、私の眼にその息吹を傳へてゐる。

2005.10.26

48505689_207

砂濱を續く足跡。
半分は私で、もう半分。
誰かの足跡を見て、思ふ。
海からの風をうけるのは私と。
誰もゐない砂濱。

多分私すら ゐない。